ホモデウスの問い
人類の究極の問いに挑戦しよう。
何か月という単位で考えるのなら、中東の紛争やヨーロッパの難民危機や中国経済の減速といった、目の前の問題に焦点を当てるべきだろう。
何十年の単位で考えるのなら、地球温暖化や不平等の拡大や求人市場の混乱が大きく立ちはだかる。
ところが、生命という本当に壮大な視点で見ると、他のあらゆる問題や展開も、次の三つの相互に関連した動きの前に影が薄くなる。
1 科学は一つの包括的な教義に収斂しつつある。それは、生き物はアルゴリズムであり、生命はデータ処理であるという教義だ。
ユヴァル・ノア・ハラリ「ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来」(位置93/100%)
この教義ではデータが本体で生命は手段ということになる。
今後すごい勢いでデータは蓄積・整理されるのだろうが、そのようなデータはどのような価値を持つのだろうか。
もしかすると、一神教の神のような存在になるのかもしれない。
2 知能は意識から分離しつつある。
ユヴァル・ノア・ハラリ「ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来」(位置93/100%)
近年の生物学によると知能は問題解決のアルゴリズム、意識はパターン認識ということらしい。
3 意識を持たないものの高度な知能を備えたアルゴリズムが間もなく、私たちが自分自身を知るよりもよく私たちのことを知るようになるかもしれない。
ユヴァル・ノア・ハラリ「ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来」(位置93/100%)
これは多くの人が企業や政府に自身の個人情報を提供すれば十分あり得そう。そして、その流れは現在加速している。
この三つの動きは、次の三つの重要な問いを提起する。本書を読み終わった後もずっと、それがみなさんの頭に残り続けることを願っている。
1 生き物は本当にアルゴリズムにすぎないのか? そして、生命は本当にデータ処理にすぎないのか?
ユヴァル・ノア・ハラリ「ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来」(位置93/100%)
もしそうだとして、そのデータに意味はあるのだろうか?
人生の意味が無いように、そのデータにも意味は無いのではないろだろうか?
2 知能と意識のどちらのほうが価値があるのか?
ユヴァル・ノア・ハラリ「ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来」(位置93/100%)
生物は生存と繁殖を目的として知能と知識を洗練させてきた。
したがって、知能と知識は手法が違うが目的は同じなのでこれに優劣をつけるのは意味が無いような気がする。
3 意識は持たないものの高度な知能を備えたアルゴリズムが、私たちが自分自身を知るよりもよく私たちのことを知るようになったとき、社会や政治や日常生活はどうなるのか?
ユヴァル・ノア・ハラリ「ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来」(位置93/100%)
人間の専門性は今より高まり、人間全体としての力は増大するだろう。その代わりに個々の能力は弱まる。
高度なアルゴリズム無しでは生活が出来ない人間が増えそう。
でも、農耕以降の人間社会も同じようなものかもしれない。今は生活に必要な物やサービスのほとんどは専門家任せなので、人は自分の専門分野には深い知識や技能を持つが、専門外に関しては無知だ。でも、そのような分業や協力がサピエンスを地球の支配者にした。